< https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28735855/ >
・・・老化とともに、聴力も低下し、難聴となる傾向があることは、多くの方が感じられているところです。ただ、難聴の原因はさまざまです。大音量の音楽(ヘッドホン、イヤホンでも起こります)、爆発音、オートバイや飛行機のごう音など、外的要因からもたらされるものもあります。また、 薬の副作用や慢性中耳炎など、私たちの体内から発生するものもあります。 しかしながら、難聴の最も一般的な原因は、やはり老化と関係があります。

 こうした原因で破れた鼓膜は、その穴が小さい場合には自然に塞がることもありますが、穴が大きくなると塞がらなくなってきます。聴力は20代をピークに、加齢に伴って徐々に低下していきます。 加齢以外に難聴の原因がないものを「老人性難聴」といいます。日本では、高齢者を中心に難聴に悩む人は100万人近く存在し、毎年2~3万人近くが聴力を取り戻すために、破れた鼓膜を塞ぐ手術を受けています。

 こうした状況に対し、ある耳鼻咽喉科医が発明した治療法により一変するかもしれません。以前から、FGFというサイトカイン・増殖因子のシグナル伝達が内耳の有毛細胞の前駆細胞の維持と分化において重要な役割を担っていることが知られていました。いくつかあるFGFのつい、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、耳に限らず、歯科領域や皮膚科領域でも、再生に強力に関与することも示されてきていました。

 これまでは、鼓膜に穴が開くことで生じる伝音難聴(鼓膜穿孔)の改善には、鼓膜閉鎖のための素材として皮下組織を採取して用いる「皮下結合組織を用いた接着法による鼓膜形成術」や、人工鼓膜(アテロコラーゲン)を用いる手法などが施行されてきた。

 ところが、従来法の鼓膜形成手術は穿孔部に素材をあてがい、鼓膜の上皮再生を促すため、耳後部の皮膚を切開する必要がありました。そこに、bFGF(繊維芽細胞増殖因子)製剤(リティンパ)を使用した鼓膜再生治療が登場し、すでに保険診療が可能となっています。この治療法によって、外来日帰り手術での鼓膜閉鎖が可能となり、鼓膜穿孔の閉鎖率もかなりの高率です。日本発の画期的な治療法です。