『CKD診療ガイドライン 2018』から、今回は「タンパク質摂取量制限」をとりあげます。

 まず、大前提として、腎機能が低下してくると、タンパク質の摂取量が問題になるかを振り返っておきましょう。これまでのメルマガでも、取り上げましたが、三大栄養素のうち、二酸化炭素として呼吸によって体外に排出できない、毒素、具体的には、不揮発性酸が産生されるのは、糖質でも脂質でもなく、タンパク質だけです。そのため、その排泄経路である腎臓の働きが低下すると、タンパク質の過剰な摂取に対し、その代謝産物である毒素が十分に排泄できずに、体内に蓄積していくことが問題になります。これが、いわゆる尿毒症と考えてください。

 古くより、タンパク質の制限は、上述のように尿毒症の産生増加を抑制すること、さらに、タンパク質摂取過多は、糸球体内圧を上昇させる因子となることが知られていました。そのため、タンパク質制限が、糸球体の保護に有効との考えが広がりました。それ以外の効果としても、リン制限による骨ミネラル代謝異常の改善、尿酸値低下、カリウム値低下も伴うことが指摘されています。

 こうした流れを受け、ガイドライン「慢性腎臓病に対する食事摂取基準 2014年版」では、CKDステージ1および2におけるタンパク質摂取に関しては、「過剰な摂取をしない」と記載されています。 また、その過剰を示す指示量として、進行するリスクのあるCKDにおいては、1.3g/kg BW/日を越えない事が目安とされています。

 一方で、極端なタンパク質制限では、体タンパク質の異化を抑制するために十分なエネルギーを確保することが困難になりやすいこともわかってきました。実際、厳格なタンパク質制限(0.6g/kg/日未満)の方が、末期腎不全の相対リスクを軽減する効果が高いことが示されたものの、栄養障害の可能性が指摘されており、臨床試験終了後8年間の経過をさらに追跡調査した報告では、厳格な低タンパク質制限を実施したグループにおいては、通常の低タンパク質群とくらべて、有意に死亡率が高かったことが報告されています。

 このように、今は、タンパク質制限は、腎代替療法が必要となるまでの時間を延長するが、腎機能の低下速度を抑制する効果は乏しいと考えられています。タンパク質制限が有効な時期が異なるので、その点を考慮する必要もあります。タンパク質制限食は、主に中等度(CKD ステージG3bから重度)の CKD 患者に対する食事療法として推奨されています。

 一方、上述のように、CKD ステージ G3a より軽症の CKD に対するタンパク質制限食の有効性は少なく、たんぱく質摂取量について明確な指針を設定するのは困難とされています。