まず、ネフローゼ症候群のすべてが、糸球体基底膜を主な舞台にして生じます。つまり、血液をろ過して、老廃物などを尿に排泄するバリアが糸球体基底膜であり、この機能や構造が異常になることで、尿中に、尿タンパクが大量に出ることになります。正常では、この糸球体基底膜は電荷が陰性に荷電されており、血液内の物質のうち、陽性に荷電した物質は通過しやすく、陰性に荷電した物質は通過しにくくなっています(charge barrier)。

 微小変化型ネフローゼ症候群においての尿蛋白漏出の原因としては、Tリンパ球から糸球体基底膜の透過性を亢進させる因子が産生されて、charge barrierが破綻することで、陰性荷電物質であるアルブミンが基底膜を透過しやすくなると考えられていますが、現在でも、まだ不明な点が多いのが実情です。歴史的には、1974年に、Shalhoub博士が、唱えた考え方です。この仮説は、微小変化型ネフローゼ症候群が、細胞性免疫に影響を及ぼす麻疹の罹患によって寛解することや、ステロイドホルモンなどに反応しやすいこと、血液疾患のひとつであるHodgkin病の治療よってネフローゼ症候群が寛解することなどの知見に基づいています。

 この仮説が発表されて以降、原因となる因子を同定しようとする多くの研究がなされてきました。現在、VPF (Vascularpermeabilityfactor、血液透過性充進因子)、IL-13、TNF-α、ヘモペキシンなどが報告されていますが確定には至っていません。

 症状の特徴は、何より、発症が急激で、進行も急速である点です。突然に発症し、高度のタンパク尿を来たすことで、低アルブミン血症にあっという間に進行し、浮腫が出現します。明らかな変化を自覚するため、発症後1~2週で来院されることが多いのも特徴です。これまでにも述べてきように、急激で重症な場合は、循環血漿量が急激に低下して、低血圧や、まれにはショックを引き起こすこともあります。

 また、合併症として、IgGの低下やステロイドや免疫抑制薬の使用によって、感染症の頻度が増加します。さらに、凝固系の因子が尿中へ喪失したり、過剰に産生したりと異常が生じる以外にも、血液濃縮や、浮腫による運動量の減少、さらには感染などが原因となって、血栓症がみられることがあります。動脈より静脈血栓症が多いとされています。