今回からは、ネフローゼ症候群の中でも、代表的な微小変化型ネフローゼ症候群にフォーカスをあてて行きたいと考えています。まず、「ネフローゼ症候群」というのは正確には病名ではありません。他の場合もそうですが、「症候群」というのは、共通する臨床的な症状を有する、さまざまな「病気」をひとくくりにした表現です。当然ながら、治療は、その症候群のうちの本当の「病気」の確定診断が重要です。一方で、確定診断が難しい場合も多く、この場合は、症候群としての特徴をにらみながら、治療法を決定したりします。

 そこで、この初回は、ネフローゼ症候群について、みていきたいと思います。まず、簡単には、ネフローゼ症候群とは、大量の糸球体性蛋白尿をきたし、その結果、低アルブミン血症や浮腫が出現するといえるでしょう。むくみ(浮腫)がみられる理由は、低タンパク血症が起こると、アルブミンという重要なタンパク質が減少して、血管の中の水分が、血管の外に移行しておこります。そのため、治療は、最初の原因であるタンパク尿をいかに減らして、正常にもどしていくかにつきるわけです。

 成人ネフローゼ症候群の診断基準は、尿蛋白3.5g/日以上(随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)が継続し、血清アルブミン値が3.0g/dL以下に低下することです。このうち、腎臓以外に原因疾患があるものが二次性と呼び、明らかな原因疾患がないもの、すなわち原因が腎臓にあるものを、一次性ネフローゼ症候群と呼びます。その代表例が微小変化型ネフローゼ症候群です。

 ネフローゼが発症する原因は、さまざまです。全体で見ても、特に一次性は原因が明確になっていないものが大部分です。一次性ネフローゼ症候群には、微小変化型ネフローゼ症候群をはじめとして、膜性腎症、巣状分節性糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎などが代表的です。

 国内での患者数は、約16,000人と報告されています。原因が不明のものが多く、そのため、一次性ネフローゼ症候群の治療には、共通して、ステロイドや免疫抑制剤が使用されます。長期の治療成績としては、原因にもよりますが、2年以上免疫抑制治療を要する症例は成人例全体の44%で、その内訳でみると、2年以上3年未満が48%、3年以上5年未満が31%、5年以上が21%となっています。また、再発もみられやすく、微小変化型ネフローゼ症候群では、しばしば起こります。

 全体像で見ると、大量の尿タンパク、低アルブミン血症に起因する、浮腫、体重増加が一般的であり、高度になると、胸水や腹水、腎機能低下(急性腎障害)がみられることもあります。また合併する病態として、脂質異常症、凝固線溶系異常とそれに伴う血栓症を認めます。そして、治療による影響としては、主に、副腎皮質ステロイドによる、骨粗鬆症、胃潰瘍。免疫抑制薬との併用で感染症のリスクの増加などが代表的で、特に高齢者では、免疫抑制治療に伴う感染症死が少なくない点が重大な問題点です。

 次回からは、一次性ネフローゼ症候群の代表例である微小変化型ネフローゼ症候群を詳しく、見ていきたいと思います。