まず、腎性貧血の基本治療は、言わずもなく、エリスロポエチンの不足に対して、赤血球造血刺激剤(ESA)が投与されています。しかしながら、赤血球を産生するためには、エりスロポエチン以外に、鉄、ビタミンB12、および葉酸といった基質の十分な供給が必要です。特に、鉄がカギになることが多くなります。

 先の、2008年の日本の腎性貧血ガイドラインでは、フェリチン値<100ng/mLかつトランスフェリン飽和度(TSAT) <20%の場合のみに鉄の補充が推奨されて、さらに、鉄の補充は静注で13回までとなっていました。しかし、鉄が極度に枯渇している状態で、鉄を静脈投与すると急激にヘモグロビン(Hb)値が上昇し、その結果、あわてて赤血球造血刺激剤(ESA)の投与量を減じるというケースがしばしばみられていました。

 そこで、鉄が枯渇する前に、ほぼ、フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%程度で、透析で失われる鉄分を経口で継続投与すると、フェリチン値は一定に保たれて、ESAの投与量は安定することが、受け入れられるようになってきました。また、鉄剤の静脈投与よりも、継続的な少量投与の方が感染症発症のリスクが低いことも確認されています。

 こうした議論の後に、2015年版腎性貧血ガイドラインが確定されました。ここでは、鉄利用率を低下させる病態が認められない場合には、という条件付きなのがですが、血清フェリチン値<100 ng/mLまたはTSAT<20%で鉄補充を提案する、と記載されました。

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