かなり以前は「IgA腎症」は良性の疾患であると言われていました。ところが、寿命が延びるとともに、IgA腎症の方の長期的な観察がなされ、少し前までは、「やっぱり、長期的(20年)には、腎不全や透析になる患者さんが多い」と理解のされ方が変遷してきました。

 そうした長い歴史の中で、治療法も変化してきました。今は、腎機能が低下しやすい、すなわち腎予後が不良となる因子(収縮期高血圧、高度蛋白尿、血清クレアチニン 高値、腎生検で腎組織の障害度が高い)を有する患者さんでは、早期より積極的な治療が奨められています。

 以前は、抗血小板薬が蛋白尿を減少させるとしてよく用いられていましたが、長期的な効果としては、ものたりないものでした。また、ステロイドも以前から、尿たんぱくの多い患者さんには用いられてきており、一定の効果をあげていました。それ以外にも、いくつかの薬剤が用いられていましたが、やはり長期投与による腎機能障害の進行抑制効果については明らかではありませんでした。

 そのような中、近年、口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス併用療法が広く用いられるようになってきています。腎生検による腎臓の障害の程度と、臨床検査での腎機能と尿蛋白量を考慮して、治療法が選択されるのですが、少なくとも腎機能が保たれていて、一方、尿蛋白量が多いと、積極的にこの治療が選択されます。

 この治療法の魅力的な点は、基本的に1年で治療が完結するという点であり、それ以上に、既存の治療法と比較して有効性が高いという点があります。まず、IgA腎症の患者さんの扁桃腺は慢性炎症を起こしていることがほとんどで、膿瘍を形成していることも多く、ここで異常なIgAが産生され、血液の流れに乗って腎臓で炎症を起こすため、その供給源を断つというのは有効です。

 それに加えて、すでに腎臓に沈着して炎症を起こしている病態の活動性にストップをかけるために、強力なステロイドパルス療法が通常はコンビネーションで用いられます。そのあとは、しばらく、経口でステロイド剤を使用します。また、補助的に、レニンアンギオテンシン系阻害薬などで治療を行うこともあります。

 ただ、IgA腎症に限ったことではないのですが、炎症以外で腎臓病のリスクとなるような高血圧の管理、減塩療法、脂質管理、血糖管理、体重管理、禁煙などは実行しなければなりません。特に、ステロイドを用いますから、血糖管理は必須です。

 これだけ魅力的な、口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス併用療法ですが、エビデンスが十分には確立していません。一つには、欧米に少ないという点があり、現在、確固たるエビデンスづくりが進行しつつあります。