さて、今回の「Q&A」でもご質問がありました「IgA腎症」を取り上げようと思います。しばらく、腎臓病の原因ごとに、全体像がわかっていただけるように、何回かにわけながら、知識を整理していこうと思います。また、最新情報も取り入れながら、できるだけわかりやすく述べていこうと思います。今回の「IgA腎症」は、5回くらいにわけて特集として連続記事を予定しています。連載中に質問も随時受け付けていますので、遠慮なく、「Q&A」コーナーに送ってください。

 今回は、「IgA腎症」の概要のお話です。そもそもIgAとは何か?から始めましょう。Igは、免疫グロブリン(Immunoglobulin)の略称で、免疫の中で重要な役割を担っていて、血液中だけでなく、体内のいろいろな組織に存在しています。 免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれの大きさや、働く場所・時期などにも違いがあります。

 IgAも、本来は生体を守るべき免疫物質の一つです。感冒や扁桃腺炎などによって、このIgAのあるタイプのものが出現し、腸管から体内に入り込み、腎臓の糸球体に沈着して、炎症を起こすことにより、血尿や蛋白尿の原因となります。正常な体内では、「腸管免疫」といって、IgAは腸管に入ってくるさまざまな病原菌や細菌を排除する役割を果たしています。腎臓1個当たり100万個ある糸球体の内部のメサンギウム領域という場所にこのIgAという抗体が沈着して、炎症を起こします。

 IgA腎症は、1968年にフランスの病理学者Bergerが「糸球体メサンギウム領域へのIgA-IgGを主体とする顆粒状沈着を特徴とするメサンギウム増殖性腎炎」として初めて報告しています。さきほどの異常なIgAは扁桃腺や骨髄で産生されていると言われており、リンパ球の機能異常、細菌やウイルス感染症、遺伝的な素因などが原因と考えられています。
 日本では1970年代初頭から研究が行われ、慢性糸球体腎炎のうち成人では30%以上、小児で20%以上を占めることが明らかにされてきました。肉眼的血尿で自身で気が付くこともあるのですが、多くの場合は、三歳児検尿、学校検尿、職場検診などの検尿で発見されます。日本はIgA腎症が多い国ですが、アジア太平洋地域の国々でも多く、一方、北欧や北米では少ないことが知られています。