日本では、毎年約40,000人もの人が新たに透析療法を恒久的に受けなければならない状況にあります。そして、維持透析患者さんの数は、年々増加し、今や33万人にいたっています。このように、慢性腎不全や透析の患者さんが増え続けている原因は、大きく分けて、2つあります。一つは、いったん腎機能が低下を始めると治す治療が存在しないこと。そして、もう一つは、悪くなっていく原因に対する有効な対策がとられていないことにあります。

日本では国民全体の半数以上が腎臓病もしくは予備軍

慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)は、2002年に米国腎臓財団の K/DOQI 診療ガイドラインの一つで定義され、その概念が拡まりました。わが国において、CKD患者さんの数は、1330万人で、成人の約7人に1人の割合で、国民病とされています。また、2018年の国際腎臓学会においては、世界中では約8.5億人がCKD患者であり、世界規模で増え続けているという深刻な状況にあります。 CKDが増えてきた原因としては、メタボの時代が到来し、高齢化も進む中、肥満や生活習慣病を原因とする二次性の腎疾患の割合が急増していることが原因です

腎臓病の診断法がほとんどない!

 それでは、CKDの診断上の問題点は何でしょう。そもそも、腎臓病の診断はどのようになされるでしょうか。一部の遺伝性の腎臓病を除くと、唯一の確定診断法が腎生検です。しかしながら、この検査は、最も血流の多い腎臓という臓器に、超音波で見ながらとはいえ、針をさして、腎臓の一部をとってくるという侵襲性の高い検査法です。腎臓は、呼吸によって動いていますから、針を刺すタイミングと呼吸を止めるタイミングを合わせなければ、大出血の危険性もあります。治療の望みがある患者さん、すなわち腎炎・ネフローゼ症候群などの一部の患者さんにおいて適応となります。それ以外の大多数のCKD患者は確定診断がなされないまま、腎機能低下の進行を少しばかり遅らせる対策を施行する以外に術がないのが現状です。そこで、侵襲性が低く、慢性の経過の中で繰り返し検査が可能な、尿や血液などを用いた、liquid biopsyに期待が寄せられています。

ほとんどの腎臓病には、治す治療法がない

 団塊の世代の人が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題が、もう目前にきています。超高齢化社会が、さらに加速し、医療と社会保障の質の維持が困難という危機感が広がりつつあります。高齢者においても、糖尿病をはじめとする生活習慣病患者数が増加し続けているという現実も問題となっています。人生100年時代とさけばれる中、健康寿命を現実のものとする具体的方策は、現時点でも確固としたものはありません。一方で、がん領域をはじめ、さまざまな画期的な治療薬も登場してきている。iPS細胞を用いた再生医療も実臨床への応用が進みつつあります。このような現状においても、腎臓病領域の未来は深刻です。腎不全・透析患者数の増加は、解決すべき重要課題と言われ、長い年数が経過してきていますが、いまだ毎年約40000人が新たに透析治療を必要となっている。健常者であっても、30歳代からネフロンの数は減り続けることが明らかであり、腎炎などの一部を除いて、大多数の腎臓病患者の腎機能低下を抑止する治療法が存在していないという厳しい現実があります。そして、残念なことに、iPS細胞研究ロードマップの中でも、治療の対象として腎臓病は常に最後尾です。詳しくは、文部科学省のホームページをご覧ください。このような深刻な現状の打破し、健康寿命を実現させるために、最も急がれる課題が腎疾患対策と言えます。