< https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32132002/ >
・・・これまでにも数多くの卵の摂取と心血管イベントに関する検討がなされてきていました。卵はコレステロールが高い食材であるためです。昨年、JAMA誌< https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30874756/ >に報告された内容は、心血管系疾患(CVD)の発症率および死亡率と、食品からのコレステロール(卵の摂取)の関連性を米国人2万9615例のデータを用いて検討したものでした。

 その結果は、食品コレステロールまたは卵の摂取にCVD発症および全死亡率と単調の関連性が認められたとするものでした。食品コレステロール摂取が、1日につき300mg増加するごとに、CVD発症リスクおよび全死亡率が有意に上昇したことを示していました。卵でいえば、摂取が1日1/2個増加するごとに、CVD新規発症リスクおよび全死亡率が有意に上昇したというものでした。

 しかしながら、今回BMJ誌に掲載された、ハーバード公衆衛生大学院のJean-Philippe Drouin-Chartier博士らの検討結果では、卵の中等度の消費(最大1日1個まで)は、心血管疾患全般のリスクを増加させることなく、アジア人ではむしろリスクを低下させる可能性があることを示しています。

 卵の消費と心血管疾患リスクの関連は、この10年間、激しい議論を呼ぶ話題となっていますが、決定的な結論はでていないように思います。しかしながら、一方で、このような、どっちつかずの結論が繰り返し発表される原因として、次のようなことが、徐々に明らかになってきています。

 わが国では「食事摂取基準」というものがあります。これは、日本人が健康を維持・増進するために摂取するべき、さまざまな栄養素やエネルギーの基準量で、厚生労働省により5年ごとに発表されています。2010年版では、コレステロールの目標量は、成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満でした。しかしながら、2015年版では、コレステロールの摂取基準(目標量)がなくなりました。

 また、最近になってアメリカでも、食物からのコレステロール摂取量と血液中のコレステロール値の因果関係を示す臨床結果データが無く、食品によるコレステロールの制限をなくすようにと、ガイドラインが変更になりました。

 そもそも、コレステロールは体内で合成する脂質であり、食事で摂取するコレステロールの影響は少ないということが分かってきました。食事で摂取したコレステロールのうち吸収されるのは、体内でつくられるコレステロールの10~30%程度ということです。また、コレステロール摂取量が少ないと、体内で多く合成し、食事での摂取量が多ければ、少なく合成されるなど、肝臓で一定量が保たれるように調整機構が作動しています。

 卵は栄養の缶詰といわれるほど、ビタミンC以外のビタミンやミネラルがバランスよく含まれ、安価で良質なタンパク源とされています。また、卵黄に含まれるレシチンは、悪玉コレステロール値を低下させるだけではなく善玉コレステロール値を増やしてくれる働きもあります。こうした複合的な働きを考えるとこれまでの議論もうなずけるところですが、個人ごとの卵摂取の適量が決まるのはもう少し待たねばならなさそうです。