皆様、これまでこのコーナーでは、国内外の研究結果をお伝えていましたが、私達の研究グループについて、知りたいというリクエストが多く、しばらくの間、国内の研究雑誌に投稿依頼があった内容を、かいつまんで、紹介させていただきます。

 わが国では人口減少が始まっているが、透析患者数は増え続け、毎年新たに約40000人が透析療法を受けざるを得ない状況が、長年続いている。高齢化の加速や生活習慣病の蔓延により、慢性腎臓病(CKD)患者数とその予備軍を合わせると、全国民の半数以上が該当する。その背景には、健診を受けても、尿の軽微な変化が、経過観察されるだけで、CKD予防に活かされていないという現実がある。また、大多数の腎臓病は正確な診断法が欠如している。そのため、腎障害の早期発見・診断・予後予測のために、病態に直結した原因分子によるbiomarker測定法の開発が急がれる。

 はじめに

団塊の世代の人が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題が、もう目前にきている。超高齢化社会が、さらに加速し、医療と社会保障の質の維持が困難という危機感が広がりつつある。高齢者においても、糖尿病をはじめとする生活習慣病患者数が増加し続けている。人生100年時代とさけばれる中、健康寿命を現実のものとする具体的方策は、現時点でも確固としたものはない。一方で、がん領域をはじめ、さまざまな画期的な治療薬も登場してきている。iPS細胞を用いた再生医療も実臨床への応用が進みつつある。このような現状において、腎臓病領域の未来は深刻である。腎不全・透析患者数の増加は、解決すべき重要課題と言われ、長い年数が経過してきているが、いまだ毎年約40000人が新たに透析治療を必要となっている 1)。健常者であっても、30歳代からネフロンの数は減り続けることが明らかであり2)、腎炎などの一部を除いて、大多数の腎臓病患者の腎機能低下を抑止する治療法が存在していないという厳しい現実がある。そして、残念なことに、iPS細胞研究ロードマップの中でも、治療の対象として腎臓病は常に最後尾である3)。このような深刻な現状の打破し、健康寿命を実現させるために、最も急がれる課題が腎疾患対策と言える。

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参照文献等
1) 日本透析医学会統計調査委員会:2017年末の慢性透析患者に関する基礎集計 http://docs.jsdt.or.jp/overview/
2) Denic A, Lieske JC, Chakkera HA, et al. The Substantial Loss of Nephrons in Healthy Human Kidneys with Aging. J Am Soc Nephrol 28:313-320, 2017
3) 文部科学省今後の幹細胞・再生医学研究の在り方についてhttp://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1113_01.pdf