◇AI時代の病態特異的バイオマーカー -限界と挑戦-
Biomarkers specific for pathogenesis in new AI era — limitations and challenges —

 I. CKDの現状

慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)は、2002年に米国腎臓財団の K/DOQI 診療ガイドラインの一つである Chronic Kidney Disease:Evaluation, Classification, and Stratificationにおいて定義され、その概念が拡まった。わが国において、CKD患者数は、1330万人で、成人の約7人に1人であるとされ、2018年の国際腎臓学会においては、世界では約8.5億人がCKD患者であり、pandemicな状況にあるという発表がなされた。
CKDの原因としては、メタボの時代より以前では、原発性の糸球体腎炎の割合が高かった。しかしながら、メタボの時代が到来し、高齢化も進む中、肥満や生活習慣病を原因とする二次性の腎疾患の割合が急増している。

Ⅱ. CKDの診断上の問題点

それでは、腎臓病の診断はどのようになされるか。一部の遺伝性疾患を除けば、唯一の確定診断法が腎生検である。しかしながら、この侵襲性の高い検査法は、治療の望みがある患者、すなわち腎炎・ネフローゼ症候群などの一部の患者において適応となる。それ以外の大多数のCKD患者は確定診断がなされないまま、腎機能低下の進行を少しばかり遅らせる対策を施行する以外に術がない。そこで、侵襲性が低く、慢性の経過の中で繰り返し検査が可能な、liquid biopsyに期待が寄せられている。特に、腎疾患の場合は、尿を用いることで、侵襲なく診断を、しかも継続的に行うことのできる利点がある。ところが、現実的には、腎臓病の多くに治療薬がない理由として、それらの分子病態が明確になっていなかったことがあげられる。現在は、病態に関わる分子が同定されれば、分子標的薬などが生まれやすい時代になっている。そのため、さまざまな基礎研究で得られた知見を基に、実際のCKD患者において、病態に関わる分子が、ヒトにおいて、実際に臨床経過や病勢を反映しているかどうかの検証がなされつつある。腎における異常は、尿の異常にほぼリアルタイムに反映される。したがって、尿中markerのprofileを評価することで、診断・治療の奏功の程度・予後などを知ることが可能となる。

続く

参照文献等
1) 日本透析医学会統計調査委員会:2017年末の慢性透析患者に関する基礎集計 http://docs.jsdt.or.jp/overview/
2) Denic A, Lieske JC, Chakkera HA, et al. The Substantial Loss of Nephrons in Healthy Human Kidneys with Aging. J Am Soc Nephrol 28:313-320, 2017
3) 文部科学省今後の幹細胞・再生医学研究の在り方についてhttp://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1113_01.pdf