皆様、これまでこのコーナーでは、国内外の研究結果をお伝えていましたが、私達の研究グループについて、知りたいというリクエストが多く、しばらくの間、国内の研究雑誌に投稿依頼があった内容を、かいつまんで、紹介させていただきます。

◇腎臓病特異的バイオマーカー

はじめに

団塊の世代の人が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題が、もう目前にきている。超高齢化社会が、さらに加速し、医療と社会保障の質の維持が困難という危機感が広がりつつある。高齢者においても、糖尿病をはじめとする生活習慣病患者数が増加し続けている。人生100年時代が身近に感じられるようになってはいるが、健康寿命延伸を現実のものとする具体的方策は、現時点でも確固としたものはない。一方で、がん領域をはじめ、さまざまな分野で画期的な治療薬も登場してきている。iPS細胞を用いた再生医療も実臨床への応用が進みつつある。このような現状において、腎臓病の分野の未来は極めて深刻である。予防法も確執していない。治すための治療薬も乏しい。腎不全・透析患者数の増加は、解決すべき重要課題と言われ、長い年数が経過してきているが、いまだ毎年約40000人が新たに透析治療を必要となっている 1)。健常者であっても、30歳代からネフロンの数は減り続けることが明らかであり2)、腎炎などの一部を除いて、大多数の腎臓病患者の腎機能低下を抑止する治療法が存在していないという厳しい現実がある。また、残念なことに、iPS細胞研究ロードマップの中でも、治療の対象として腎臓病は常に最後尾である3)。このような深刻な現状の打破し、健康寿命を実現させるために、最も急がれる課題が腎疾患対策と言える。

I. CKDの現状

慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)は、2002年に米国腎臓財団の K/DOQI 診療ガイドラインの一つである Chronic Kidney Disease:Evaluation, Classification, and Stratificationにおいて定義され、その概念が拡まった。わが国において、CKD患者数は、1330万人で、成人の約7人に1人であるとされ、2018年の国際腎臓学会においては、世界では約8.5億人がCKD患者であり、pandemicな状況にあるという発表がなされた。
CKDの原因としては、メタボの時代より以前では、原発性の糸球体腎炎の割合が高かった。しかしながら、メタボの時代が到来し、高齢化も進む中、肥満や生活習慣病を原因とする二次性の腎疾患の割合が急増している。

(次回へ続く)

参照文献等
(1) 日本透析医学会統計調査委員会:2017年末の慢性透析患者に関する基礎集計 http://docs.jsdt.or.jp/overview/
(2) Denic A, Lieske JC, Chakkera HA, et al. The Substantial Loss of Nephrons in Healthy Human Kidneys with Aging. J Am Soc Nephrol 28:313-320, 2017