< https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31995687/ >
・・・この報告は、臨床論文の最高峰である、the New England Journal of Medicine (N Engl J Med)にて発表されたものです。かつては、急性腎不全とも呼ばれていた腎障害も含む、文字通り、短期間で腎臓に障害が生じた急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)に関する報告です。AKIは、腎障害が回復するものもあれば、回復せずにCKDに移行するものも少なくないことが知られています。ただ、その違いを精確に説明することも、臨床上で分別することも、現在はできておりません。

 また、この研究で、バイオマーカーとして用いられた分子が、可溶性ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(suPAR)というものです。名前が長く、名前だけではどうした分子が想像つかないかもしれませんが、これまでの報告では、白血球、線維芽細胞、血管平滑筋細胞、新生血管内皮細胞、骨髄細胞などでの発現がしられています。

 機能の全貌はまだ不明で、炎症(動脈硬化、関節炎)に伴う発現の増加が報告されています。細胞周囲でのuPA/プラスミン/マトリックスメタロプロテイナーゼ系の活性化、およびそれに続く細胞外マトリックス(ECM)の分解を促進し、細胞の遊走に寄与することなどが示されてきました。

 今回の報告では、冠動脈造影施行患者、心臓手術施行患者などを対象に、可溶性ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(suPAR)高値と急性腎障害(AKI)の関連を臨床的に検討し、さらに、実験モデルを用いたsuPARの作用機序同定等も実施しました。

 その結果、suPARが低値であると、AKI発症のリスクや死亡例が優位に減少していました。また、マウスに対して造影剤を投与したsuPARを過剰に発現したマウスを観察しました。抗uPARモノクローナル抗体による前治療でsuPAR過剰発現マウスの腎障害が緩和されることが示され、細胞レベルではミトコンドリア由来の超酸化物生成が正常化されていました。ヒトにおいても効果が得られるとなると、新たな標的治療薬になりそうです。